feature潮目の海が育んだ恵みを未来へつなぐ ― 浪江町・請戸

福島県浪江町の東端に位置する請戸うけど 地区は、太平洋に面した歴史ある漁港の町。ここは、暖流の黒潮と寒流の親潮が交わる「潮目の海」に面しており、日本でも有数の豊かな漁場として知られています。

この海が育むのは、「常磐ものじょうばんもの」と呼ばれる高品質な魚介類。ヒラメ、メヒカリ、アンコウ、シラス、そしてカレイ――四季折々の旬が水揚げされる港には、海の恵みとともに暮らしてきた人々の誇りが息づいています。

かつては漁業とともに賑わいを見せていた請戸地区は、2011年の東日本大震災と原発事故により大きな被害を受け、津波による多くの犠牲と全住民の避難を余儀なくされました。
津波の影響により請戸地区へ居住することは難しくなってしまいましたが、漁港は2020年4月に操業を再開。逆境の中にも新たな希望の兆しを見出し、未来へと歩み始めています。

豊かな海と漁師の誇りが詰まる『請戸もの』3つの魅力

潮目の海が育む豊富な魚種と活きの良さ

請戸漁港は、親潮と黒潮がぶつかる栄養豊かな“潮目の海”に面し、約100種類にも及ぶ魚介が年間を通じて水揚げされます。ヒラメ、シラス、カレイ、スズキ、サワラ、タコ、フグ、イセエビなど、季節ごとに多彩な海産物が揃うのが特徴です。

海が緑色に見えるのは栄養豊富なプランクトンの証。漁場から港までの距離が近く、素早く水揚げされるため、鮮度抜群の魚介を地元のお店でも楽しめます。

地域ブランド「常磐もの」の代表格

福島沿岸の高品質海産物「常磐もの」の一翼を担う存在として、請戸で水揚げされる「請戸ものうけどもの 」は特に市場で高く評価されています。豊洲市場でも引き合いが強く、プロの料理人にも選ばれる理由です。

復興の象徴と地域の熱意

2011年の東日本大震災と原発事故により甚大な被害を受けた請戸漁港は、一時機能喪失。しかし2020年4月には9年ぶりに競りを再開し、漁師、仲買人、地域が一体となって“請戸もの”の再生を牽引しています。若手や女性漁師の活躍、多様性が光る港として新たな一歩を刻んでいます。

ブランド化・魅力発信の取り組み

浪江町では「請戸ものロゴマーク」を2024〜25年にかけて公募し制定。ロゴは緑色の波をあしらったデザインが象徴する“潮目の海”を表現し、情報発信力の強化に役立てられています。

また、SNSや東京でのインフルエンサー招致イベント、地元レストランでのフェアなど、広く魅力を伝える活動が展開されています。

請戸ものに出会える浪江のスポット

浪江町内にて『請戸もの』を扱っている店舗・飲食店です。そのおいしさをぜひ地元で堪能してください!

【販売店】

【飲食店】

かあちゃんの浜料理『請戸ものレシピ』

請戸地区で受け継がれてきた飾らない漁師の家庭料理を、多くの方々に知ってもらいたいと制作された料理紹介動画。広報誌で紹介しているレシピ集と合わせて自宅で請戸料理にトライしてみてください!

なみえ広報掲載レシピ

なみえ広報に「かあちゃんの浜料理 請戸めし!」コーナーで定期的に請戸ものを使った料理を紹介しています。栄養士からのワンポイントアドバイスもありますよ。

ホッキ味噌

材料

  • ホッキむき身…3個
  • 長ネギ…………半本
  • 大葉……………6枚
  • サラダ油………小さじ1
  • 酒………………大さじ1
  • 砂糖……………大さじ1と1/2
  • 味噌……………大さじ1と1/2

作り方

  1. ホッキはむき身にして海水程度(水1リットルに塩大さじ2)の水で洗い、5~8mm幅に切る。
    長ネギは斜めに薄切り。大葉は千切り。
  2. 熱したフライパンにサラダ油をひき強火でホッキを炒める。
  3. ホッキの色が変わってきたら、酒、砂糖を入れて、なじんだら味噌を入れてよくかき混ぜる。
  4. 長ネギと大葉を入れて、水気がなくなるまで炒りつけたら完成。

ワンポイントアドバイス

ホッキ貝は、疲労回復や高血圧の改善などに効果のあるタウリンを豊富に含みます。

シラスの簡単まぜご飯

材料

  • 炊いたご飯……2合分
  • シラス…………大さじ7
  • かつお節………6グラム
  • 白ごま…………大さじ2
  • しょう油………少々
  • 大葉……………6枚

作り方

  1. ご飯にシラス、かつお節、白ごま、刻んだ大葉を入れてさっくりと混ぜる。
  2. 香りづけに、しょう油をさっと回しかけて混ぜたら完成。

ワンポイントアドバイス

しらすは、骨も含めてまるごと食べられる魚のためカルシウムが豊富に含まれています。
冷めてもおいしいので、おにぎりにも向いています。大人は刻んだ長ネギを入れます。
このレシピには特に「上乾しらす」がおすすめです。

紅葉汁

材料

  • 生鮭切り身……2枚
  • いくら……適量(お好みで)
  • A(大根…1/8、にんじん…1/4本、里芋…4個、ごぼう…1/4本、板コン…1/4枚)
  • B(白菜…2枚、ねぎ…1/3本、豆腐…半丁)
  • 味噌……大さじ3
  • 酒……大さじ1
  • 水……4カップ

作り方

  1. 鮭は骨付きのまま、1口大に切る。
  2. 大根、にんじんはイチョウ切り、里芋は小口切り、ごぼうは薄く斜め切り、白菜は1.5センチ幅に、ねぎは斜め切りにする。こんにゃくは1.5センチ角に手でちぎる。豆腐は鍋にいれる時に手で崩しながら入れる。
  3. 鍋にAの野菜と、水、味噌大さじ1、酒を入れて火にかける。
  4. 野菜にだいたい火が通ったら鮭の身を入れる。
  5. 鮭に火が通ったところを見計らって、残りの味噌を溶かし入れる。
  6. Bの野菜・豆腐を入れ、火が通ったらお椀に盛り付ける。お好みでいくらを入れて完成。

ワンポイントアドバイス

  • 鮭には、悪玉コレステロールを減らすEPAや、中性脂肪を減らすDHAが含まれています。
  • 海側の地域ではイクラを、山側の地域ではきのこを入れます。
  • 紅葉汁は浪江町の郷土料理の一つです。

請戸を感じる年間行事

出初式(1月)

浪江町請戸漁港の出初式は、漁業の安全と豊漁を祈願して新年(毎年1月2日)に行われる伝統行事です。

漁船が大漁旗を掲げて港内を巡る様子は壮観で、地域住民や関係者が一年の無事故と繁栄を願い集います。

復興への願いも込められた、地域に根ざした新年の節目の儀式です。

シラス漁(夏~秋)

浪江町請戸漁港のしらすは、初夏から秋口にかけて漁が本格化し、特に秋頃が最盛期。
多い時には数十トン単位で水揚げされ、一番の旬を迎えます。

浜のブランド品として、ぷるぷると張りのある香り豊かな生シラスもこの時期が味わいどきです。

請戸魚市(12月)

請戸魚市は、請戸漁港で毎年12月に開催される冬の風物詩で、「請戸もの」と呼ばれる鮮魚や加工品を販売。

無料のホッキ飯振る舞いや活気ある競りの様子が魅力で、地域と漁師の復興の象徴です。

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